47年前の1月12日、ベロンベロンに酔って帰って来た父は、俺が産まれたことを聞くなり、こう言って寝てしまったそうだ。
「んなアホな。」
普通以上に大きく膨らんだ母のお腹を見て、周りの人々のうちの何人かは、「双子ちゃうの?」とは言っていたそうだが、担当の産婦人科医は断固として認めなかったため、父も母も双子が産まれてくるとは、想定していなかったのだった。現在のように、赤ちゃんの姿がくっきり写るエコー(超音波)検査機なんてものも、当時はなかったのだろうけど、母のお腹に聴診器を当てるたびに、きっと俺らのその心音は完全にシンクロしていて、医者には見分けられなかったのだろう。
しかし、俺はいた。
兄のヒロシが生まれ落ちてから初めて、産婦人科医は俺の存在に気付き、こう言ったそうだ。
「あれ?もう一人おるわ。」
そして、その報告を受けた父はこう言って寝た。
「んなアホな。」
無事、産まれてきてくれてありがとうやで、俺。