恥ずかしいセリフ

誰にでも、思い出すだけで耳がカァッと赤くなる。そんな恥ずかしい言葉をかつて吐いた経験があるはずだ。

 

 

 

 

 

それは15年くらい前のこと、僕と妻は不動産屋巡りをしていた。あちこちの中古物件を探していたのだ。一人目の子供が生まれ、荷物も増えてきて、2DKのハイツでは手狭になってきていた。

 

 

その日も僕らは、ある不動産屋さんにいくつかの物件を案内してもらっていた。午前中に複数の物件を回ったが、特にグッとくることもなく、なんだかなぁと思いながらも、その日見た中でも一番マシな池沿いの物件の前で僕はその不動産屋さんにこう言っていた。

 

 

 

 

 

「この物件、もうちょっとまかりまへんか?」

 

 

 

 

 

今となってはなぜ、こんな発言をしたのかまったくなぞだ。

 

 

 

 

「まかりまへんか?」

 

 

 

 

そんなベタベタの関西弁を僕はこれまで使ったことなんてない。そんなコテコテの関西弁を使っている人も、テレビの中でしか見たことがない。そんな言葉をよりによって、まったく買うつもりもない物件に対して使ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不動産屋さんのタバコ臭い営業車に乗って、不動産屋さんのある駅前まで帰る道中、ずっと僕の耳は赤かった。

 

 

 

 

 

 

これを書いている今も僕の耳は赤い。

 

 

 

 

 

 

 

おわり