緊張感について

ものすごい緊張感だった。

3月20日(日)12:30 全日本クロスカントリー選手権「サザンハリケーン」の戦いの火ぶたが切られた。 AA1クラスの猛然としたスタートを見た我々は、あわてて丸太セクションへ駆け寄った。

全長約6.5kmに及ぶコースの最後にレイアウトされた丸太セクションへ、ライダーたちがやってくるのは10分ほど後のことだろう。

丸太の固定は崩れないか?我々の不備による怪我人はでないか?何かトラブルが起こったときに、ベストな対応ができるだろうか?




約半年前、このレースの主催者であるJNCCから丸太セクションの設営を打診された我々は、何の迷いもなくそれを引き受けた。面白そうだったから、様々なアイデアを提案し、JNCCとの打ち合わせを重ね、必要な丸太を数え、東吉野の放置された山へ入り、杉の木を300本切り倒し、運び、そして600箇所に穴を開け、紆余曲折四苦八苦悪戦苦闘七転び八起きしながら設営したのだ。なにぶん初めての経験だったので、やってみると不安な要素が圧倒的に多かった。



日本のトップライダーたちが集う3時間のレースの中で、およそ2000回以上もハイスピードで丸太にバイクが突っ込んでくることになる。何が起こるのかは想像もできないが、なにがなんでもレースを中断してしまうようなことだけは避けたい。丸太セクションの周りに陣取った我々が固唾をのんで見守る中、バイクの爆音がこちらへ近づいてきた。

ものすごい緊張感だった。

丸太セクションの手前100m先に見えるカーブから先頭を走るライダーが姿を現したかと思うと、次から次へとライダーがやってきて丸太セクションへ突っ込んでいく。僕らの苦労とは関係なく、トップライダーたちにとっては、それほど難しいトライではないようで、なんの躊躇もなく丸太へ突っ込んでいく。もちろん中には、失敗するライダーもいるし、行きたくないなぁというライダーのための迂回路も用意されているため、セクションへ入ってくるのは技術の高いライダーがほとんどなのだが、レースの二日前、設営中の我々に向かって「簡単すぎる。」と言ってきた地元のライダーに対する悔しさが、ふと胸に蘇ってくる。あまり難易度を上げたくない主催者の要望に応えた結果なのだが、我々が設営にかかった時間と苦労を思うと、やり切れない思いが胸を覆う。無理に無理を重ねて、身体のあちこちが痛むし、我々はずいぶんと疲れきっている。

・・・ん?

その時になって気がついた。我々が作った丸太セクションの周りには応援に来たライダーたちの家族や友人らの人だかりができていたのだ。その顔には興奮の色が浮かび、始終キラキラした目のままレースを見つめている。カメラや携帯を手に歓声を上げ、いつまでもそこを動こうとしない観客たちを目にした我々は、目頭が熱くなるとともに、今回の試みが成功したことを確信した。



疲れも一瞬でぶっとんだ我々は、飛びっきりの特等席から、観客たち以上にレースを楽しんだのであった。

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