緑色のやつ

この世に存在する数あるお菓子の中で、イラッとさせられることにかけては、このお菓子の右に出るお菓子はないと、僕が思っている物を今日はご紹介したい。

 

神戸に本店のあるお菓子屋さんの定番商品なのだが、よく、贈答品としてもらうことがある焼き菓子なので、知っている人も多いだろう。

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何かの折に人からもらうお菓子セットなので、僕にとっては、年に一度食べるかどうかの特別感のあるお菓子だ。七人家族四人兄弟の家で育ったので、食べたいものを食べるという制度はなく、たいていジャンケンをしてどれか一つ、または二つを選んで食べることがほとんどだった。

 

 

何にイラッとするのか?

 

 

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ジャンケンに勝ったら、ついつい緑色のやつを先に選んでしまうのだ。形も三角形なもんだから更なる期待感が高まっていて、ついついこれに手が伸びてしまう。

 

 

 

 

 

絶対にうまいやつやん♡

 

 

 

 

 

しかし、次の写真を見てもらいたい。

 

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分かってもらえるだろうか?緑色のやつの中身は、ペラッペラのお菓子が三枚入っているだけなのだ。炭酸せんべいくらい薄い。そして、味も薄っす〜い。そう。このお菓子セットの中で、当たりは真ん中の二つ、赤色と金色のパッケージのやつで、赤いやつの中にはチョコが、金色のやつの中にはホワイトチョコが入っている。ちなみに、銀色の袋に入ったやつも緑色のやつと同じようなタイプで、生地も味も薄っす〜い。つまり、四種類のうち二種類がハズレなのだ。

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おいっ!この緑色のやつの外装からは、抹茶クリームが入っているか、チョココーティングされてるか、生地にクリームが練りこんであってフワッとしとるやつが出てこんとおかしいやないかいっ(怒)

 

 

 

 

  

 

 

 

緑色のキラキラした袋に包まれているときのその凛とした佇まいと、中から出てきたときのあまりにも素朴すぎる姿や味が釣り合わなすぎるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その凛とした佇まい……というセリフは、僕がいつか声に出して言ってみたいと思っているセリフだ。しかし現実には、なかなかそんな機会はないので、ブログの中で使ってみた。ちなみに、僕がいつか言ってみたいセリフランキングの第一位は……

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくり飲むんだ。

 

 

 

 

 

 

というセリフだ。しかし、山小屋の近くで、遭難して倒れていた少年を助け、ベッドで気が付いた少年に、木の器であったかいスープをふるまうというシチュエーションがなかなかやってこない。これもいつか満を持して言ってやろうと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて話が逸れてしまったが、 緑色のやつは、別に不味いわけではない。僕は炭酸せんべいが好きなので、違う出会い方をしてれば、好きになっていた可能性もあるのではないかと思っている。例えば、透明のビニール袋に雑に詰められて、スーパーの駄菓子売り場に売られていたら、きっとこんな悪口を言われなくても済んだことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

イラッとするのなら、最初から赤か金の当たりのやつを選んだらいいじゃないですかって?

 

 

 

 

 

 

 

うーん。

 

 

 

 

 

 

なんせ、年に一度くらいしかこのお菓子には出会わないものだから、忘れちゃっているのだ。ついつい選んでしまうのだ緑色のやつを。そして僕はまたイラッとするだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このお菓子を知っている人なら、きっとこの気持ちを分かってくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

ライバル

俺とあいつはライバルだった。俺とあいつは、いつもくだらないことで張り合い、常に互いの行動に目を光らせ、相手の失敗やカッコつけようとした瞬間などを見つけては、すかさずツッコミを入れていた。

 

そう。あいつとは、俺の双子の兄のヒロシのことだ。中学生時代は、そのライバルならではの応酬が一番激しかった時期で、所属していた軟式テニス部では、双子でダブルスのペアを組んでいたのだけど、(双子なだけにレベルが限りなく近かったのと、顧問の先生の面白半分な興味からによるペアリングだ。)お互いのミスがゆるせないもんだから、負け試合のときはひたすら険悪なムードで試合が進んでいった。あんまり憎たらしいもんだから、俺なんてサーブを打つ時に、ヒロシの後頭部を狙って打ってたもんね。本気で。そんな多感(?)な中学時代に、俺は取り返しのつかない失敗を犯してしまった。それは、中三のある夜のことだ。

 

その夜、俺は悪夢にうなされていた。今でもありありとその夢の内容を思い出せる。蜘蛛のようで蜘蛛でない、わけのわからない真っ黒な大量の蠢く虫たちが、家の前にある公園で集結して、次第に家の中へ侵入し、俺の部屋めがけて階段や天井を這い上がってくるのだ。そこから、一気に扉を突き破って部屋に流れ込んでくるシーンが何度も繰り返されるという悪夢だった。逃げようともがいても、なぜか身体がまったく言うことを利かず、何度も同じように襲われていた俺は、再び時間が巻き戻された公園で集結している虫らの気配を感じていた。もう嫌だ。もう襲われたくない。鉛のように重たかった俺の身体が、まず指先からピクリと動いた。それをきっかけに、ガバッと一気に飛び起きた俺は、迷わず隣りのヒロシの部屋に駆け込んでいた。寝ていたヒロシが、眠そうに布団に上半身を起こして不審がる。

 

 

 

 

「な、なによっ???」

 

 

 

 

「おるねん!」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

「おるねん!」

 

 

 

 

 

「はっっっ???」

 

 

 

 

「おるねんてっっっ!!!」

 

 

 

 

 

とにかく、もう時間が残されていない。奴らの気配が、すぐそこまで迫って来ているのだ。俺は、迷わずヒロシの布団の足元にもぐりこんで、そのまま頭からすっぽりと掛け布団をかぶった。身体中にかいている汗の量もすごかったが、がくがくと膝が震えていることにも気づいた。

 

冷静になってきたのは、しばらく経ってからのことだ。こ、これはやばい。俺は今、絶対にやってはいけないことをやってしまっている。実は、俺が三歳くらいの時にも、寝ぼけて布団から起き上がり、家の外まで走って出たことがあるらしいのだ。隣りで寝ていた母親が気づいて追いかけると、家の前の公園まで逃げた俺は、追いついてきた母親の顔を見て、こう叫んだそうだ。

 

 

 

 

 

「ぎゃーーー!!おばけーーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

なんせ三歳くらいの時のことらしいので、まったく自分では覚えてないのだが、ことあるごとにその話題は食卓にのぼり、家族からいじられていたのだ。中三にもなって、怖い夢を見て、あろうことか最大のライバルの布団にもぐりこむなんて、これは一生コケにされ続けるに違いないぞ。と、ヒロシの布団の中で違う種類の汗をかき始めていた俺は、ヒロシの寝息が聞こえてくるまでひたすらジッと待ってから、気づかれないよう、ゆっくりと、ゆっくりと自分の部屋へ戻ったのだった。

 

 

 

 

「おい、あれは何やったんや?」

 

 

もちろん翌朝、ヒロシが聞いてきたので、俺は答えた。

 

 

「はっ?何が?」

 

 

できる限りキョトンとした顔で、俺はトボけた。当時、中三だった俺のその時の演技力は、その年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされてもおかしくないくらいに洗練されていたと思う。調べて見ると、その年(1988年)のアカデミー賞主演男優賞は、映画『ウォール街』のマイケル・ダグラスが受賞したらしい。

 

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……は?

 

 

 

俺やろがいっ?

 

 

 

昨夜の「おるねんっ!」のくだりも含めて、俺こそが主演男優賞や。迫真に迫る演技やったやろがいっ。ダグラスごときが何をでしゃばっとんねん。フン。

 

 

 

さて、ヒロシには、それからも二〜三度確認されたが、そのまま、ひたすらトボけにトボけ続けて、十年以上経ってからカミングアウトした。

 

 

 

「あ、あほよっ。あの時、むっちゃくちゃ怖かってんぞっ。」

 

 

 

と、怒られた。考えてみりゃそりゃそうだわな。ごめんよヒロシ。

 

 

 

 

 

 

おわり

バリカン

バサバサバサッ

 

 


新聞紙の上に前髪が落ちた。

 

 

 


え?

 

 


一瞬なにが起こったのか、分からなかった僕は、次第にその状況を飲み込んできて青くなる。


僕の右手には、6mmにセットされたバリカンがあり、頭は床に広げた新聞紙の上にもたげさせている。


そもそも、伸びすぎたアゴヒゲを整えようと、床に新聞紙を広げたのが悪かった。その同じやり方で、僕は8年間に渡り丸坊主だった頭を自分で刈ってきたものだから、新聞紙の上に屈み込んだ途端、条件反射的にバリカンを持った右手が頭部へ行ってしまったのだ。そして……

 

 

 


バサバサバサッ

 

 

 


新聞紙の上に前髪が落ちた。

 

 

 


今春から、8年ぶりに伸ばしだした僕の髪は、ようやくツーブロックにできるようにまで伸びてきたというのに、一瞬にして僕の目の前は真っ暗になった。

 

 

 

丸坊主にしている友人の岡本君に、もしも髪の毛を伸ばすときがきたら、気をつけたほうがいいぜと話すと、「んなあほな。」と一笑に付されたが、年賀状に「岡山県」と書かなければならないところを無意識に「岡本」と書いてしまったことが過去に何度もあるはずなのだ。僕もこれまでに何度、「東京都」と書こうとして、「東条」と書いてしまったことか……長年の習慣とは恐ろしいものなのである。

 

みんなも宛名書きとバリカンには気をつけよう。次は、この話を他人事と思い油断しているあなたの番かもしれない。書き損じたハガキなら5円払えば戻ってくるが、部分的に刈ってしまった前髪はなかなか元には戻らないのだから。

 

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テキ屋

「見た目はテキ屋のくせに不器用やなー。」

 

僕と鉄さんは、町内会盆踊りでの模擬店の準備をしていた。夕方までにヨーヨーを100個膨らませておかなければならないのだ。ヨーヨーとはあれだ。小さなゴム風船の中に少しの水をいれて膨らませて、その縛り口にゴムをひっかけてあるやつだ。そのゴムの端を指にかけて、ぼよんぼよ~んと手のひらで突いて遊ぶあれだ。

 

暑い夏の午前中いっぱいかけて、テントや太鼓のやぐらなどの設営の終わった会場の見張りも兼ねて、子供会の役員が二人で一時間ずつヨーヨーを膨らませることになっていた。僕らの割り振られたのは午後三時から四時の一時間、そして膨らませるヨーヨーのノルマは100個だ。

 

相方の鉄さん(仮名)とはその時、ほとんど初めて顔を合わせたのだが、入れ替わりになった役員さんと、僕も鉄さんも顔見知りだったこともあり、なんとなくお互いに自己紹介しそこねたまま鉄さんとふたりっきりの時間が始まってしまった。どちらも積極的にしゃべるタイプではないので、ゴム風船を膨らませなければならないというミッションがあるのがありがたかった。それでも、「家はどのへんですか?」とか、「子供さんは何年生ですか?」とか、興味はないんだけど、とりあえずその場しのぎ的な話題でしのぎながら、僕らはゴム風船を膨らませていった。

 

コツさえ掴んでしまえばなんてことない作業なのだけど、ゴム風船を専用のポンプで膨らませてから、口元をプラスチックの留め金で括ってしまうまでの間に、左手の力を使うので、続けているうちにだんだんと握力がなくなってくる。それでも四時までに終わらせてしまわなければならないため、結構がんばらなくてはならなかった。

 

それにしても、鉄さんはさっきから何度も何度も失敗しては、そこらへんに水をまき散らしている。横目で見ていると、どうやら最後の留め金をうまくつけられないようで、もう一息のところでぶしゅーーーーーーーとゴム風船から空気と水が抜けてしまっているのだ。僕が2~3個作る間に、鉄さんがようやくひとつ完成させられるかどうかくらいのペースだ。

 

「見た目はテキ屋のくせに不器用やなー。」

 

心の中で僕はそう突っ込んだ。鉄さんの見た目はなんだかとってもテキ屋っぽいのだ。年齢は、三十前後というところだろうか、よく焼けた肌とむっちりしたボディに茶髪が似合っている。顔は超童顔でニコニコしているのだけど、どことなく漂う雰囲気がテキ屋っぽいのだ。決して僕はテキ屋さん業界に詳しいわけではないのだけど、とにかく鉄さんはテキ屋っぽい。わかりにくい例えかもしれないが、「旅芸人の子供」+「ヤンキー」=「テキ屋っぽいと思うのだ。

 

それにしても、鉄さんはあいかわらずぶしゅーーーぶしゅーーーーーという音を次々とさせている。これでは四時までに終わらないではないかと、イライラの限界に達した僕は、鉄さんの方に向き直って、でしゃばらない程度のテンションで、「どうやってやってます?」と聞いてみた。見ていると、どうやら鉄さんは、留め金の止め方に問題があったようで、僕はうまくいくコツをさりげなく伝授した。自慢ではないが、僕はコツを飲みこむのがなんでも早く、人に教えるのもまたうまいのだ。

 

ようやく鉄さんのぶしゅーーーーも落ち着いたかに思えたのもつかの間、しばらくすると、また3~4個にひとつはぶしゅーーーーと失敗する鉄さん。

 

「見た目はテキ屋のくせに不器用やなー。」

 

という言葉を僕はぐっと飲みこんだ。さっきから何度も頭の中で突っ込んでいるのだが、僕はこの言葉を口にするのを躊躇していた。鉄さんとは、さっき初めて顔を合わせたばかりだということもあるのだが、鉄さんにはどことなく突っ込みにくい雰囲気があるのだ。もし、少しでも突っ込めそうな雰囲気があれば、お調子者でもある僕は迷うことなく突っ込んでいただろう。

 

 

 

 

 

後になって分かったことなのだが、まず鉄さんは、少し前に酔っ払って喧嘩をし、左手の指の靭帯を切って治ったばかりなので、ほとんど手に力が入らなかったらしい。

 

 

 

 

そして、鉄さんはホンマモンのテキ屋の息子だった……。

 

 

 

 

 

 

「見た目はテキ屋のくせに不器用やなー。」

 

 

 

 

 

 

あぁ、言わなくてよかった。ど突かれるところやった。

雨の日のキャンプ

 

「コラコラコラッ。汚い足を上げるなっ。」

 


テントを仕舞おうと思って車に近づいた僕は、座席の上のカバンに無造作に置かれた長男アタラの足首をむんずと掴んでそう言った。

 


天気予報の通り、キャンプ初日の夕方から降り出した雨は、夜半過ぎには土砂降りに変わり、テントや道具類は全て、跳ね上げた泥で汚れていた。二日目の今日は、朝から雨の間隙を縫いながら、みんなで雑巾で拭っては車への積み込み作業をしていたが、高校生になってから益々朝に弱くなったアタラはダラダラとして、隙あらばサボろうとするので、油断がならなかった。

 

ついさっきも、片手に水中メガネだけを持って、緩慢な動きで車に積みに行こうとするので、両手に荷物を持てるだけ持っていくように注意したところだった。

 

僕がテントを仕舞おうと車に近づいて行くと、側面のスライドドアから、アタラが上半身を無理やり後部の荷室へ突っ込んでゴソゴソしている。足は、濡れた衣服を詰めたカバンの上に置かれており、上を向いた足の裏には泥やら何やらの汚れがついていたのだ。


アタラときたら足グセが悪くって、目の前に人がいても足の裏を見せて、堂々と机に足を上げるし、靴下はそのへんに脱ぎ捨ててはいつまでも放ったらかしにするし、靴は踵を踏んで駄目にしてしまうし、すぐに裸足で駆け出すしで、とにかくその足グセの悪さにいつも僕は辟易としていたのだった。その朝も、アタラの眠たさアピールとガサツさに、僕はついついイラっとした。

 


「コラコラコラッ。汚い足を上げるなっ。」

 


そう言って僕は、むんずと掴んだ足首を持ち上げてから、自分の犯した失敗に気づいて青くなった。

 


それは、かおりさんの白くてか細い足だった。今回のキャンプには、以前から僕ら家族にキャンプへ連れて行って欲しがっていたかおりさんを連れて来ていたのだ。あいにく雨の日のキャンプになってしまったが、無邪気に楽しんでくれたかおりさんは、雨の中カッパも着ずに懸命に片付けてくれていたのであった。

 

そういえば、かおりさんもアタラもスラリと細くて長い手足というフォルムがよく似ている。しかし、似ているのは身体のフォルムだけで、かおりさんはおとなしくて、白いブラウスがとてもよく似合う……休日はいかにも図書館で過ごしていそうなタイプの女子だ。それに、よくよく見てみると、かおりさんの足の裏には葉っぱが二枚ほど張り付いていただけで、そんなに汚れていたわけではなかったのだが、哀れ足首を掴まれてしまったかおりさんは、あわわわわと声にならない声を出しながら、目を真ん丸に見開いて僕を見ていた。

 


「ご、ごめんなさいっ。」

 


と謝るかおりさんに、僕が全力で謝り返したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

『雨の日のキャンプ』おわり

シャネルのマーク

眼のいい人には分からないだろうけど、乱視とは不便なもので、視界がぼんやりぼやけてしまうのだ。視力検査のときなんて、Cの穴が塞がってしまってどっち向きか、さっぱりわからないし、○が二重に重なって見えるので、全部シャネルのマークに見えてしまう。最近さらに乱視が進み、眼鏡をかけていても5m以内の視野に入ってこないと、人の顔も識別できなくなっていた。(ちなみに眼鏡を外したら、まるで水中にいるような感じで、ほとんど見えない。)ちょうど、眼鏡もくたびれてきて買い替えどきだったので、レンズの度数を強くしてみた。

 

いやぁ、世界ってこんなに晴れ晴れとしてたんだね。梅雨空だというのに、街中の景色が眩しくて、まるで新鮮とれたてな魚があちこちでビチビチと飛び跳ねているかのようだ。生きてるって素晴らしい。街がきれい。

 

あまりによく見えるので、家の中でも、我が妻の雑なところが目について目について仕方がない。そこらへんに靴下は脱ぎっぱなしだし、人が寝てても階上でドスドス歩き回るし、いつまでも回覧板が家に留まっているし、食卓のタクアンは底で繋がっている……はぁ、見えすぎるって、決していいことばかりじゃないのかもね。

 

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眼鏡のソムリエ

お気に入りの眼鏡に、そろそろ買い替えの時期がやって来ている。そこで四年ぶりに、高松市の眼鏡屋augen optik(元藤澤眼鏡店)へやって来た。実は十八年前から、眼鏡を買うときはここで買うと決めて通っている。

 

店内をぐるりと回りながら、二つほど手に取ってみたものの、今回はどんな眼鏡にしようというビジョンも何もないまま途方にくれていると、店員さんが静かに近づいて来た。俺は、「待ってました!」と、心の中でソッと呟く。

 

美しくレイアウトされた数ある眼鏡の中から、「これなんてどうですか?」と、次々と差し出してくる眼鏡はどれも素敵で、まるで俺にかけられることを待っていたかのように思えてくる。そして、俺の好みを知りつくしているかのようなプレゼンをしてくる店員さんは、もう眼鏡のソムリエのようだ。最終的に三つの眼鏡に絞り込み、店員さんに頼んで店の外に鏡を持ち出し、太陽光線の下で、慎重にそのフォルムや色合いを確かめる。

 

いつもなら比較的、直感だけを頼りにし、手早く買い物を済ませる俺なのだけど、なぜだか眼鏡を選ぶときだけは悩みに悩むのだ。

 

あぁ、もしもaugen optikと出会ってなければ、今頃俺は眼鏡選びのラビリンスに迷い込み、おしゃべりな白うさぎを追いかけて、体が小さくなったり大きくなったりし、動くトランプなどさまざまなキャラクターたちと出会いながら、あちこちの眼鏡屋さんをウロウロするはめになっていたことだろう……って、誰が不思議の国のアリスちゃんやねんっ。

 

ごほんごほん。長いノリツッコミが決まったところでですね。もしも俺と同じように眼鏡選びに苦労している方がおられたら、ぜひ一度augen optikに、足をお運びください。とてもいい眼鏡屋さんです。

 

http://augen-optik.biz/item/