シャネルのマーク

眼のいい人には分からないだろうけど、乱視とは不便なもので、視界がぼんやりぼやけてしまうのだ。視力検査のときなんて、Cの穴が塞がってしまってどっち向きか、さっぱりわからないし、○が二重に重なって見えるので、全部シャネルのマークに見えてしまう。最近さらに乱視が進み、眼鏡をかけていても5m以内の視野に入ってこないと、人の顔も識別できなくなっていた。(ちなみに眼鏡を外したら、まるで水中にいるような感じで、ほとんど見えない。)ちょうど、眼鏡もくたびれてきて買い替えどきだったので、レンズの度数を強くしてみた。

 

いやぁ、世界ってこんなに晴れ晴れとしてたんだね。梅雨空だというのに、街中の景色が眩しくて、まるで新鮮とれたてな魚があちこちでビチビチと飛び跳ねているかのようだ。生きてるって素晴らしい。街がきれい。

 

あまりによく見えるので、家の中でも、我が妻の雑なところが目について目について仕方がない。そこらへんに靴下は脱ぎっぱなしだし、人が寝てても階上でドスドス歩き回るし、いつまでも回覧板が家に留まっているし、食卓のタクアンは底で繋がっている……はぁ、見えすぎるって、決していいことばかりじゃないのかもね。

 

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眼鏡のソムリエ

お気に入りの眼鏡に、そろそろ買い替えの時期がやって来ている。そこで四年ぶりに、高松市の眼鏡屋augen optik(元藤澤眼鏡店)へやって来た。実は十八年前から、眼鏡を買うときはここで買うと決めて通っている。

 

店内をぐるりと回りながら、二つほど手に取ってみたものの、今回はどんな眼鏡にしようというビジョンも何もないまま途方にくれていると、店員さんが静かに近づいて来た。俺は、「待ってました!」と、心の中でソッと呟く。

 

美しくレイアウトされた数ある眼鏡の中から、「これなんてどうですか?」と、次々と差し出してくる眼鏡はどれも素敵で、まるで俺にかけられることを待っていたかのように思えてくる。そして、俺の好みを知りつくしているかのようなプレゼンをしてくる店員さんは、もう眼鏡のソムリエのようだ。最終的に三つの眼鏡に絞り込み、店員さんに頼んで店の外に鏡を持ち出し、太陽光線の下で、慎重にそのフォルムや色合いを確かめる。

 

いつもなら比較的、直感だけを頼りにし、手早く買い物を済ませる俺なのだけど、なぜだか眼鏡を選ぶときだけは悩みに悩むのだ。

 

あぁ、もしもaugen optikと出会ってなければ、今頃俺は眼鏡選びのラビリンスに迷い込み、おしゃべりな白うさぎを追いかけて、体が小さくなったり大きくなったりし、動くトランプなどさまざまなキャラクターたちと出会いながら、あちこちの眼鏡屋さんをウロウロするはめになっていたことだろう……って、誰が不思議の国のアリスちゃんやねんっ。

 

ごほんごほん。長いノリツッコミが決まったところでですね。もしも俺と同じように眼鏡選びに苦労している方がおられたら、ぜひ一度augen optikに、足をお運びください。とてもいい眼鏡屋さんです。

 

http://augen-optik.biz/item/

依存性

子供達も寝静まり、撮り溜めていたお笑い番組をダラダラと見ていたら、お風呂を出た妻が、バタバタと慌てた様子で、玄関から外へと出て行った。

 

毎度マンネリな、お笑い芸人のキャスティングにウトウトとしていた僕は、その音と気配に、ハッと目を覚ました。しばらくして外から帰ってきた妻がリビングのソファーに身体を沈めながら、「ハァ〜、すっきりしたぁ〜。」と言うので、「な、何があったん?」と問うた。

 

10年以上前、庭の片隅に植えたワイヤープランツが、あちこちにしつこく根を伸ばしていて、それらをプチプチ引っこ抜くのが気持ちよすぎると言うのだ。妻は、朝に昼に、そして夜にそれらを見つけだしては、繋がった根っこをプチプチ引っこ抜く依存症になってしまっていたのだった。

 

さて、前置きが長くなってしまいましたが、そんなワイヤープランツの根っこをプチプチ引っこ抜く気持ち良さに、かなり近い快感が得られるのが、このmusashi社の開発した “ 除草バイブレーター ” なのです!!一度使い出したら、きっとあなたは、庭の雑草抜きをやめられなくなることでしょう。しかし、ご心配なく!電気式ですので、真夜中でもご近所様に迷惑になることなく、その快感に打ちひしがれることができるのです!!

 

 

 

 

……え?ワイヤープランツの根っこの抜き心地が、イマイチわからん?

 

 

 

 

そ、そんなもんワシも知らんがなっ!!

 

 

快感の除草機 除草バイブレーター(WE-700) - YouTube

合気道の木

私は、合気道の木を登っている。何十人もの大人たちが両手を広げ繋がって、ようやく一周できるくらいに太い太いその木の幹には、どこにも手がかりがなく、最初は登るためにどこへ手や足をかければいいいのか、まるで分らなかった。見上げてみると、複雑に絡み合う枝と生い茂る葉で、果たして私に登ることができるのだろうか?と不安になったが、繰り返し登る練習をしているうちに、だんだんコツをつかんできて、ある程度までは登ることができるようになってくる。何せ、登り方は師が丁寧に教えてくれるのだ。ほどほどに慣れてくると、木の幹から枝分かれして伸びていっている枝の方へ登っていくように師から促される。そこでは肩に力が入りすぎて、どうしても登れなくなってしまったり、力を入れて握ると、枝がポキッと折れてしまったりするが、いつも師は枝の先の方にいて、我慢強く私を導いてくれる。驚いたことに、この木の枝は、どこまでもどこまでも伸びていて、終わりがないのだ。いや、終わりがないというより、枝は今この瞬間も先へ先へと成長し続けているようだ。無我夢中で登っていくと、いつの間にかそこに師はいなくなっている。キョロキョロと見回してみると、(飛び移りでもしたのだろうか、)師はすでに違う枝に移っていて、「こっちへ来なさい。」と、葉と葉の隙間からニコニコ笑いかけているのだ。私は、枝から足を踏み外さないように、ゆっくりと幹の部分まで降りてから、師の登っている枝に足をかける。今度の枝は、やたら樹皮がツルツルしていて、なかなか登ることができない。しかし、見ていると師はこともなげにするすると登っていく。結局私は、その枝にまったく登ることができないままだったが、またいつの間にか、次の枝に移っている師の呼ぶ声が上の方からする。「今度は、こっちだよ。」私は、半分ホッとしながらついていこうとするが、今度の枝には棘があり、注意して登らないとならないので、やたらと時間がかかってしまう。一息ついて、頭上を見上げてみると、気が遠くなるほどに枝は続いているようで、覆い尽くされた葉で先の方までは見えない。下を見てみると、すぐそこに地面があり、思っていたほど登ってきていないことが分かり、気が遠くなると同時にひとつ武者震いをする。そして、またいつものように私の目線の先に師はいなくなっている。しばらく師を探すが、見つけられないでいると、後から登ってきた人が枝にしがみついたまま動けずにいたので、手を貸しながら一緒に登っていく。気づくと、先ほど登ることができなかったツルツルした枝のところにやってきたので、試しに登ってみる。よく見てみると、枝には蔦が絡んでいるのに気づき、それを使いながら登っていくが、いつの間にか蔦がなくなってしまう。どうしようもなくなってしまったので、落ちないように枝にとどまっていると、目の前に師の足が見えた。師が、「目を閉じて登りなさい。」と言うので、思い切って目をつぶり枝を登ると、不思議と足元が安定し登っていくことができた。急に、「さぁ、ご覧なさい。」と師が言うので、目を上げてみると、枝の間から、これまでに見たことのないほどに美しい景色が広がっていた。そして、またしばらくすると、師は隣りの枝に移っていて、するすると枝を登っていく。私は思い切って、枝から枝に飛び移り、師の後をついていく。その枝の向こうに広がる新しい景色を見るために・・・。

稽古

毎週木曜日、加古川市立武道館で合気道の稽古をしていると、隣りの道場では、いつも同じ時間帯に少年柔道の稽古をしている。

 

今日も大きな声が聞こえてきた。「お前、亀になるために来たんか?」どうやら、寝技の稽古をしている少年が集中的に怒られているようだ。「オイッ。ええかげんにせえよ。お前ほんま背中蹴ったろかー!」少年の泣きそうな鼻息が聞こえてくる。こっちも稽古中なので、ちゃんと見てないのだけど、想像するに、抑え込みに持ち込まれないように、必死にうずくまって抵抗し続けたのが、先生の逆鱗に触れたのだろう。

 

ちなみに、怒号を発しているのは女の先生だ。

 

加古川市立武道館の二面ある道場と道場の間には仕切り板なんてないので、稽古の間、こんな調子でずっと隣りの怒鳴り声が道場中に響き渡っている。こちらが静かに呼吸法をしている最中でも、御構いなしだ。

 

「もっと気合い入れんかい!」「オルァ!」「それがお前らの限界かー!」「オルァアアア!!」「ボケッーとすんなー!!」「オルルルルァアアアア!!」「泣くなら、辞めてまえーっ!」女の先生がメインで怒り、ところどころで、いかつい顔した男の先生が怒鳴り声をかぶせてくる。女の先生は、ずっと怒っているし、男の先生はとにかく威嚇し続けている。(不思議なことに、テクニカルな指導は一切しないのだ。)

 

 

それにしても、お前、亀になるために来たんか?」って、そんなわきゃあないのだが、先生にはその時、少年が亀に見えたのだろう。

 

 

だって「オイッ。ええかげんにせえよ。お前ほんま背中蹴ったろかー!」って言った先生は、きっとただのスーパーマリオのやり過ぎなのだろうから。

 

 

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お前がええかげんにせえよな。

 

 

 

 

 

うるさいねん。

フラフラ

夕方から吐き気がしてフラフラするし、風邪かな早く寝ようと思ってたけど、よく考えたら今日は忙しくて昼飯食ってなかった。そんな今夜は一日遅れの誕生パーティでした。

 

昨日ついに44歳になりました。はっはー、さすがにこの歳になったら誕生日なんて、死に一歩近づいたことを実感するだけの日で、目出度くもなんともないんだけど、昨夜の合気道の稽古では、(誕生日だからというわけでなくて、誕生日だとは言ってないのでたまたま)先生の受けを取らせてもらうことができ、とても満たされたいい誕生日となりました。

 

合気道の型稽古では、まずみんなの前で先生が見本を見せ、技のポイントを解説してから、それぞれ何組かに分かれて稽古をするということを繰り返すのですが、上の級の人の中からひとりが選ばれて先生の見本の技を受けるのです。これはとても光栄なことというか、その華麗な技を、そして身体さばきを一番の特等席で見ることができるだけでなく、我が身に直接受けることができるというとてもスペシャルでプレシャスなことなのです。例えるなら、桑田投手の投球をひたすら受けることができるみたいな?ご、ごめん。俺まったく野球に関心がないので、野球に例えてみたものの、例えとして桑田が適切なのかどうかまったくわからんわ。むしろアンチ巨人の人々にとっては、まったくピンとこないよね。

 

さて話は戻りますが、受けをさせてもらうとですね、型稽古の間、休む間がないので結構たいへんなんですね。先生に恥をかかせてはいけないという緊張と、皆に見られている緊張とで、体力のない僕なんかは、体の芯から疲れて足腰フラフラになるのですが、先生の前で疲れた体たらくを見せてしまい、もしも受けを誰かに交替させられてしまっては悔しくて悔しくて眠れない夜を過ごさなければならなくなるので、あくまで平静を装い、息もなるべく乱さないように振る舞うなど、必死のパッチで頑張ったのでした。そして、何よりも嬉しくて楽しくてしょうがないので、ついついニヤニヤしてしまいそうになるのを、心の中で頬っぺたをギュウっと抓りながら必死で抑えたのでした。いや、これはもうニヤニヤが漏れてもうてたかもな。漏れてもええがなええがな。まぁそんなわけで、いい誕生日でした。イヤッホー今夜はしこたま飲むぞーっ。ハッピーバースデー俺。

んなアホな

母の大きく膨らんだお腹を見て、周りの人たちに「双子ちゃうの?」と言われたこともあるそうだが、医者からは「ひとりですよ。」と診断されていたので、何の準備もしてなかったそうだ。くっきりはっきりとお腹の中の赤ちゃんが男なのか女なのかまで分かるエコー(超音波)検査も、当時はまだなかったのだろう。まぁ聴診器くらいはお腹に当てたのだろうけど、きっと双子たちの心音は完全にシンクロして、同じビートを刻んでいたのに違いない。どくどくどく。

 

 

ジョー家の三人目としてヒロシが母のお腹の中からでてきてすぐに、医者がこう言ったそうだ。

 

 

 

 

「あれっ?まだおるわ。」

 

 

 

その五分後、ジョー家の四人目としてタカシが産まれた。逆子だったそうだ。さてその夜、父が、いつものようにベロンベロンに酔っ払って家に帰ってくると、祖母が「たいへんや!双子が産まれたんやで!」と報告するが、父は「んなアホな!」と言ってそのまま寝てしまったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

そんなヒロシタカシは、もうじき44になります。

 

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